あやべ吉水への再訪で感じた「不便かもしれないけど心が豊かになる暮らし」

6月初旬の1週間、関西・中部をめぐる車の旅に出かけました。
京都北部の綾部市にある茅葺屋根の古民家、あやべ吉水に毎年縁があって行っているのですが、今回もその流れで綾部~奈良~伊勢神宮というルートで行ってまいりました。

まずはあやべ吉水での様子から。
ここに行くといつも「自然に囲まれた暮らし」「昔の日本の暮らし」についていろいろ考えさせられるんですが、今回もいろいろと目からウロコなことがありました。

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今回で4回目!女将さんと行くあやべ水源の里

あやべ吉水の女将さん、中川誼美さんが大磯の近所なのでよく一緒に食事させてもらったり、いろいろとお世話になっている僕ら夫婦。
一昨年、昨年と綾部のお宿にもご一緒させて頂き、今年もまた同行させてもらうことになりました!

↓これまでの綾部に関する記事↓

一人で車を運転して日本中どこでも行ってしまう中川さんですが、最近車の免許を返上し公共交通機関で移動しているそうです。
そこで今回はワタクシメが車を運転して西へ向かうことに。

あやべ吉水へ!
途中で休憩した大津パーキング。琵琶湖を一望!

神奈川県・大磯から休憩を入れたりして約7時間。
軽のワゴンでがんばりました。
3人でワイワイやりながらの楽しいドライブ。京都に入ってからは中川さん行きつけの八百屋さんなどに寄って食材などを購入したりしました。

あやべ吉水へ!
京丹波の道の駅「和(なごみ)」の正面にある無農薬野菜の直売所。通称「仙人」のおじさんが一人でやっている。

夜に無事にあやべ吉水に到着。
聴こえるのはカエルの鳴き声と風の音だけ。

あやべ吉水へ!
直売所で買ったお総菜や仙人のおじさんから買った野菜で遅めの晩御飯。

もてなすのではなく「暮らしに参加」してもらう

あやべ吉水にはシーズン中、国内外問わずたくさんのお客さんが泊まりに来ます。
でも普通の宿屋のようにお客さんをもてなすのではなく、茅葺屋根の古民家の暮らしに参加してもらう、というようなスタンスでやっています。

僕らが到着してその翌日にファミリーで泊まりに来られた団体さん(大人6人、子供4人)もそのスタンスをよく理解されているようで、1泊2日だけだったけど古民家暮らしを楽しんでいました。

あやべ吉水へ!
ご飯炊きは昔ながらのやり方。
あやべ吉水へ!
薪ボイラーに火をつけたら子供たちが集まってきた。そのまま火の番を任せることに。
あやべ吉水へ!
敷地内で採れる山椒や蛇イチゴの実。山椒は醤油漬け、蛇イチゴは焼酎に漬ければ化粧水になる。このほかワラビや山ウドなどを摘んで天ぷらに。
あやべ吉水へ!
何より外で食べるご飯がおいしい。

祝島で複合農業に取り組む氏本さん。そこでの運営スタイルをあやべ吉水に反映

あやべ吉水はこれまでに多くの人が運営に関わってきました。
今回新しく運営に携わることになったのは、山口県の瀬戸内海に浮かぶ島、祝島で農園を営む氏本さん

あやべ吉水へ!
朝食の準備をする氏本さん。

生まれも育ちも祝島という氏本さんは北海道で牧場を運営した後に故郷の祝島にUターン。
現在進行形で畜産や畑、田んぼなどで自然の恵みを無駄なく生かした有機的でサスティナブルな農業を実践しています。
また、氏本さんの農園では豚を自由に放牧して育て、エサは地域のコミュニティから得られる残飯などを有効利用しているそうです。

あやべ吉水へ!
去年訪れた綾部の放牧養豚場。泥まみれになって自由に豚が動き回っていた。
氏本さんもここを視察し、祝島の豚と同じような育て方だったため「すばらしい」と太鼓判が押されました。

今回のあやべ滞在の最終日は女将が用事で先に帰ってしまったので、僕ら夫婦と氏本さんの3人になりました。
食事の際はいろいろな話題で盛り上がりました。とりわけ氏本さんの目指しているライフスタイルについての話がとても理想的で、ウンウン頷きながら聞き入ってしまいました。

あやべ吉水へ!
朝食に頂いた祝島氏本農園の豚肉。スモークされてて絶品の味わい。

海の幸・山の幸が豊富な日本。もともとクオリティの高い農水産物があるのにそこでは満足せず、どんどん大量生産・大量消費の道を突き進み、今がある。
廃れつつある農水産業を再生し、地方から人々の暮らしを活性化させることがこれからの日本を支えていく鍵となるんじゃないか。
そのためには日本の文化をないがしろにせず、昔から伝えられてきた先人たちの知恵をこれからも伝えていくことが大切。

・・・ニュアンスは違うかもしれないけど、そんなことを語ってくれました。

あやべ吉水の運営者となることに決めた氏本さんの狙い

それは、祝島で続けてきた農業を主体とした持続性のある暮らしを、綾部でも展開していきたいということ。
離島だとなかなか人が来られない(天候によって船の出ない日もある)けど、陸続きの場所であればもっとたくさんの人にこのような暮らしを体験してもらう機会が増える。そういう目論見もあるそうです。

あやべ吉水へ!
あやべ吉水周辺の上林地区の様子。近くの坂尾呂神社から撮影。

あやべ吉水は集落の一番奥に位置し、後ろは渓谷と杉林が広がり、浄化された水と空気が漂う場所です。
茅葺屋根の古民家の周りには耕作されてない農地があり、この場所を使って新たに田んぼや畑、放牧養豚を始め、祝島で培われたノウハウを生かしていきたいとのこと。

あやべ吉水へ!
茅葺古民家の遠景。周りには豊かな水源と耕作可能な土地が広がっている。

氏本さんが思い描くあやべ吉水の新しい姿がどんなものになるのか、また楽しみができました。

表面的な枝葉じゃなくて根っこにある見えない部分こそ大事

24時間営業のコンビニやスーパー、捨てるほどありふれた食べ物、過剰とも言える除菌抗菌グッズの数々、携帯・スマホ依存・・・
挙げたらキリがないけど、遡れば昔の日本にはなかったものばかり
確かに便利になった現代の世の中だけど、暮らしの満足度が上がらないのはなぜなのか?
むしろこれら「当たり前のもの」に依存しすぎて、縛られたような息苦しさが蔓延してるような気がしてならない。

あやべ吉水へ!
夜は月が明るくて電気かと思った。そして息をのむ星空。6月下旬にもなると無数の蛍が宙を舞う。

「昔の日本は良かった」とか安直な懐古主義になるつもりはないですよ。
でも今の状況に、ある種の危機感というか無理が生じてると思う人が増えてるのは否めない事実。
イケイケ経済至上主義・物質的豊かさを求める時代が終わって、自然を大事にして心の豊かさを求めていく時代に移ってきたんじゃないかなと思います。

あやべ吉水へ!
近所の田んぼの様子。美しく植えられた稲の苗。

昔の日本になかったものと言えば、有り余る電気・電力(足りてないと政府は言ってますが)もそうですね。
祝島と言えば山口県で建設計画がある上関原発の反対運動を行っている場所としても知られています。
氏本さんや他の島民も反対運動に参加しているため、「祝島」というだけで「ああ、原発反対の場所だから自然のある暮らしを提唱しているんだな」という色眼鏡で見られがち。
もちろんそういう側面はあるのでしょう。でもそれはあくまで目に見える枝葉の部分です。
もっと大事なのはその根っこの部分。

あやべ吉水へ!
枝葉の部分も大事だけど、もっと大事なのは目に見えない根っこの部分。

不便かもしれないけど心が豊かになる暮らし

根っこにある部分というのはそういうことなんじゃないかな。

今回のケセラセラ

縁あって毎年訪れるようになったあやべ吉水。
そしていつも女将さんについて行ってケセラセラ~と楽しんで帰る僕ら夫婦。

しかし今回氏本さんにお会いして、とても実質的なお話を聞かせてもらい、何か協力できればなーと考えました。がしかし、いったい何ができるんだろう。

農業の経験があるわけではないし、草刈りだってまともにできやしない。山の中から食べられるものを見つけて料理することなんてまず無理。
僕としてはせめてブログで体験談を綴っていくことしかできないなーと、またしてもケセラセラモードに。

でもそうやってすこしずつ意識が広がっていくだけでもいい、と氏本さんはおっしゃいます。
都市型生活から持続可能な田舎の暮らしにいきなり完全移行するのは無理、と氏本さんもおっしゃってました。
だから、100%振り切るんじゃなくて、例えば10:0だったのを9:1、8:2・・・と意識する割合を増やしていくだけでも違ってくる、とも。

便利な都市型生活から不便でも心豊かになれる自然生活へ。
少しずつシフトしていく人が増えればギスギス感漂う世の中も変わっていくのでは、と思う今日この頃です。