古典落語は疲れた現代人のこころの処方箋、みたいなお話を聞いた

落語はこころの処方箋という話

最近NHKらじるらじるの聞き逃しサービスをよく聞くようになりまして、過去に放送された番組をアレコレ選んで聞いてます。
最近聞いて面白かったのが日曜カルチャーという番組の「落語はこころの処方箋」というコーナー。現役の噺家さんの講演会を録音した1回1時間、全4回の番組です。

スキマ時間に飛び飛びに聞いてたのですが、面白くてついつい時間を忘れて聞き入っちゃうことがありました。

いま僕らが生きる現代ってインターネットが発達していろんなことが便利になったのに、なぜか生きづらさを感じる人が多い。世の中便利になってるはずなのに苦しいのはなぜ?

そこで、江戸時代に生まれた落語の話を紐解きながら、現代人が生きやすくなるヒントを探る・・・みたいなお話。
面白かったのでその内容をこちらでもシェアしておきます!

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勝ち負けにこだわらない賭博的な生き方

最近の世の中、勝つか負けるかのどっちか、という二元論で成り立ってる気がします。

歴史を見ると明治時代以降、外国に立ち向かうためにはもっとがんばらんといけない!という風潮が強まってきました。その精神は昭和にも受け継がれ戦争・敗戦・経済競争という流れが続きましたが、どれも「勝ち負け」へのこだわりが根底にあって、それが現代の息苦しさ・閉塞感へとつながっているようです。

昭和を年齢に例えた話が面白いです。ざっとこんな感じです。

  • 16歳(昭和16年) やんちゃ盛りで戦争に突入
  • 20歳(昭和20年) 敗戦して反省、大人の階段上る
  • 30代〜50代(昭和30年〜50年代) バリバリサラリーマン時代
  • 60代(昭和末期〜平成) バブルでウハウハ 弾けてしょんぼり
  • 70代以降(平成〜令和の現代) 景気後退 もういろいろ疲れた

一方江戸時代の頃はそれほど勝ち負けにこだわる世の中じゃなかったんですね。
江戸町民の気質として、目先の勝ち負けより一か八かの賭博的な生き方が特徴的でした。
勝ったら勝ったで嬉しいけど、負けたら負けたで仕方ない、まあいいか!という考え方が強かったわけです。もちろん現代にもそういう人はいっぱいいるけど、江戸時代は社会全体がそんな雰囲気で、気楽に呑気に生きていけたんです。

スポーツに例えるとこんな感じかもしれません。

  • リーグ戦みたいな江戸時代・・・負けてもまた次があるさ
  • トーナメント戦みたいな明治以降・・・負けたら終わり、はいそれまでよ

賭博的な生き方といえば、例えば、困ってる人がいたら世話を焼いてやらないと気が済まない、自分の財産を投げ打ってでも人のためならと助けてあげる、という気質がありました。
やるだけやって、あとはお天道様が決める。どこか潔い気っ風があったんですね。

今でももちろんボランティア活動をはじめ、いろんな善意が満ち溢れてますが、それでも荒んだ空気はどこにでもあります。
昔の江戸っ子みたいにこんな心意気を持った人がもっと増えれば今の閉塞的な世の中を打破できるんじゃないでしょうか。

与太郎が受け入れられた江戸社会

落語の話によく与太郎というキャラが登場します。ボケーっとしててろくに仕事もせずダラダラしてるんだけど、なぜか憎めない。周りの人たちが放っておけず、いろいろと世話を焼きたくなる存在です。
与太郎はボーッとしてて自分から動こうとしないけど、人から「やれ」と言われたら愚鈍なまでに一生懸命やる性格。そして決して人を陥れたり悪口を言わない優しい心を持っていました。だから江戸時代では彼のようなダメな人でも「いいところもあるじゃないか」と、受け入れられるおおらかさがあったんですね。

一方現代の日本でこんな与太郎みたいな人がいたらどうでしょう?
「言われたら一生懸命やる」「心優しい性格」という部分より「仕事もせずにダラダラ」「ボーッとして容量が悪い」っていうところだけフォーカスされがちなんじゃないでしょうか?

今の日本は正論がまかり通り、間違いはなんでも是正されなくちゃ気が済まない世の中になってる気がします。
意見が違う人から正論を振りかざされたり、「常識」じゃないことをすると奇異な目で見られたり、不祥事を起こそうものなら徹底的に叩かれたり・・・いろいろ思い当たることがあります。

ボケとツッコミって考えたら今の日本は総ツッコミ社会なんじゃないかと。ボケてるやつは許されないような気風が漂ってます。

まあ、それが今の整然と安定した時代を作ってるわけですが、やっぱり面白みに欠けるし縛られたような息苦しさも感じちゃうわけです。

駄目な部分を直す、間違いは正す、というのは社会を良くする上で大切なことだけど、そこに与太郎的なエッセンスを加えてみるのはどうでしょう。

自分が与太郎になる

  • 俺が俺がと言わず、ゆったりと構えて生きる
  • 人の意見を良く聞き「囃されたら踊る」=人から勧められたことは愚鈍なまでに一生懸命取り組んでみる
  • てっぺんを目標とせずにコツコツやることを目標とする
  • 常識にとらわれず「常識転覆力」を持つ
  • 頑なにならず「振り回され力」を持つ

周囲の与太郎を受け入れる

  • ダメなやつでもいいところを見出してみる
  • 意見が異なっても吸収する
  • IQ重視じゃなくて愛嬌を重視してみる
  • ノルマ重視じゃなくノロマにも良いところを見出す

人ばかりか社会全体がこんな与太郎エッセンスに馴染めるようになったら、もうちょっと寛容な世の中になるんじゃないでしょうか。

* * *

他にもいろんな面白い話が聞けたけど、とりあえずこの辺で。
このコーナーの聞き逃しは3月末〜4月上旬まで聞けるようです。気になった方はどうぞ!

落語はこころの処方箋
NHKアプリ「らじるらじる」→「聞き逃し」→「教養/ドキュメンタリー」→「日曜カルチャー」

講師の立川談慶さんの講義はこちらからもサワリだけ見られます。ビジネスマンに向けた講義みたいです。

この落語家さん、いろいろ本を執筆してまして、落語に絡めたビジネス書が多いのですがこちらがオススメです。

今回のケセラセラ

経済優先で突き進んできたけど、現代になってふと立ち止まってみると疲れ果てた僕たちがいる。
だから最近は自分優先・経済優先じゃなくて助け合い応援し合い、物や時間に限らずいろんな価値観をシェアする動きがあちこちで見られ始めてます。

成長しきった日本は今後「成熟」に向かっていくのか、それともそのまま無理に成長を続けていくのか・・・。
どっちにしても誰もが疲れず病まず、のんきで気楽で楽しい時代になっていけばいいなと思いますよ、ほんとに。