ダークツーリズムスポットを訪れ過去に起こった悲劇に思いを馳せる
旅行の一つのスタイルとして「ダークツーリズム」というのがあるということを最近知りました。
ダークツーリズムとは戦争や災害、差別や貧困、環境汚染など過去に起こった様々な「悲劇の現場」となった場所へ足を運ぶ事。そしてそこで起こった出来事を学び、感じ、悲劇的な出来事に思いを馳せること。
楽しい旅行のはずなのになぜそんな悲しい場所に訪れるのか。
実は僕は旅先でそのような場所に(できるだけ一人で)足を運ぶことが多く、その場所に佇んで「昔はここでこんなひどいことがあったんだなー」と感慨に耽ることが嫌いじゃありませんでした。むしろそのような場所を目指して旅をすることも少なくありません。
このダークツーリズムという旅行スタイルの枠組みがあるのを知り、「これだ!」と目からウロコが出たので、そのことについて書いていこうと思います。
「負の遺産」とはちょっと違うかも
悲劇的な出来事があった場所、もしくはマイナスイメージが染み付いた遺物を日本語では「負の遺産」と呼ぶこともあります。
例えばポーランドのアウシュビッツやカンボジアのトゥールスレン収容所跡なんかは人間の偏った倫理観が生み出した悲劇的なスポットとして人類の負の遺産と呼ばれたりします。
だけど、自然災害で多くの人が亡くなった場所などは元々普通に人々が生活してて、たまたま災害に巻き込まれて悲劇につながった。これを負の遺産と呼ぶのはちょっと違うかなーと。
かと言って悲劇の場所巡り、っていうのもちょっとしっくり来ない。
そこへ来てこのダークツーリズムという言葉。暗い歴史への旅というべきか。
大まかなくくりとしてこの旅行スタイルが近年確立されて、テーマを持って旅をする人も少なくないようです。
必ずしも負のイメージがあるわけではなく、結果的に悲しい記憶を残す場所になってしまったところもあります。
これらを大まかにくくってダークツーリズムという風に捉えるのはいいかもしれないなーと思った次第です。
観光学の分野でもダークツーリズムが研究されているとのことですが、しっかりとした決め事があるわけじゃなく、あくまでその場所に訪れる人の感性に委ねるところが大きいのかもしれません。
なので、僕も個人的に「ここはダークツーリズムスポットだなー」と感じることができればOKと思ってます。
ダークツーリズムスポットは「現代につながっている場所」に限る
悲劇が起こった場所は人類史において世界中に数知れず。だけどダークツーリズムとして成り立つのはあくまで記憶として現代に通じている場所のみ、っていう漠然とした定義みたいなのがあるようです。時代でいうと先の大戦、もうちょい長く見積もっても百数十年くらい前まででしょうか。
大昔の戦場跡や何百年も前の自然災害の被災地とか訪れても当時の様子を思い浮かべるのは容易なことじゃなく、まったくイメージが湧かないので近現代の歴史をテーマにしたツーリズムとしては成り立たないからでしょう。
第二次世界大戦の記憶を残す場所、例えば広島の原爆ドームやナチスドイツの遺したアウシュビッツなど、当時を経験した人がまだ存命で、映像や写真も多く残っており現代に生きる僕らの世代にも響くものがあります。
ダークツーリズムのメリットとデメリット
ダークツーリズムを旅行のテーマとした場合に得られるメリットはどんなものか?
- 知らなかった歴史を知る機会を得られる
今は平和そのものの場所も、過去に起こった悲劇的な出来事を知った上で訪れると見方・感じ方が変わってきます。 - 旅行に意義を持たすことができる
過去に犯した過ちを2度と繰り返さないように、悲劇の場所を取り壊さず風化させず、後世に残すということはとても意義のあること。
それらのスポットに実際に足を運んで空気を感じ、知識を深め、できればブログやYouTubeなどでアウトプットしていくことで多くの人に伝える。そうすることで知らなかった歴史の事実をほんの少しでも他の人たちと共有することができます。
ただ楽しみのために旅行するだけじゃなくて、ダークツーリズムを取り入れることでちょっと違った視線でものを見ることができるのはとても有意義なことです。
一方、デメリットとなることは
- 気が滅入ることがある
事前に本などを読んで知識を入れておくのがダークツーリズムのポイントですが、あまりに悲劇的すぎて気が滅入ることがあります。
そして現地で見た写真や資料があまりに衝撃的すぎてげんなりしてしまうことも多々あり。 - 地味
実際訪れてみたら石碑が一つポツンと建っているだけだった、なんてこともザラです。その石碑の裏に隠された事実を知ることがダークツーリズムの醍醐味でもありますが。 - 場所によっては情報が少ない
観光スポットとして有名な場所ならいざ知らず、人々に忘れられそうになっているマニアックなスポットもあります。そういうところはネットでの情報も少なく、書籍を参考にしたり現地に住む人などから直接話を聞きながら訪れる必要性も出てきます。
ダークツーリズムは派手さはないけど意義を感じることのできる旅行スタイル。玄人好みの旅行スタイルと言ってもいいかもしれませんね。
沖縄へ
今年は沖縄に行く予定を立てています。
グルメや市場巡り、きれいな海をみるためにビーチへ行くなど、沖縄の魅力はたくさんありますが、ダークツーリズムを知ってからは若干目的が変わってきたかも。
何と言っても沖縄は先の大戦で日本軍が米軍と最後の激戦を繰り広げた場所。そして多くの一般市民が巻き込まれた悲劇的な側面が数多く残されています。
不謹慎な言い方をすればダークツーリズムスポットの宝庫と言ってもいいかも。
事前に知識を得ておこうと様々な沖縄戦に関する本を読んでいますが、上記のデメリットでも触れたようにとにかく「気が滅入る」。
一般市民が米軍上陸の脅威にさらされて玉砕・自決を迫られ、自殺あるいは家族どうしで殺しあう。そんなことが実際に起こったなんて現在の沖縄からはとても想像できません。
だけどたくさんの体験者が証言しているように、本当に75年ほど前にあった出来事なんですね。
ゆかりのある場所に訪れるのは確かに気が滅入ることかもしれないけど、風化させてはいけないことだと思います。
次元を超えた旅ができる新たな旅行スタイル
二次元的に地図上をなぞり、三次元的に陸海空を移動していろんな体験をして帰ってくる、それが旅行というものかと思います。
さらに、過去に起こったことを知って当時の状況に思いを馳せる。時間という概念を取り入れることで、かっこいい言い方をすれば「次元を超えた旅」が可能になります。
城巡りや遺跡巡りでも同じことは言えますが、現代に通じるダークツーリズムだからこそ思いを深めることができることでしょう。
原発事故現場、日航機墜落事故現場、成田闘争、ベルリンの壁、グラウンドゼロ、今尚続く南北朝鮮の境界線などなど、近現代につながるスポットが国内や海外にはいっぱいあります。
そういう場所を目的として次元を超えた旅をしてみるのもいいかもしれません。
新たな旅行スタイルとしてのダークツーリズム。
過去に起こった悲劇を後世に伝えていく意味でも、もっと多くの旅人に認知されればいいなと思います。
ダークツーリズムを知るきっかけになった本
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