インド旅から学ぶ。混沌の中でも楽しく生きるヒント

40年ほど生きてると「人生とは・・・」とたまに考えたくもなります。

例えば川下り。
川の流れに逆らって無理矢理自分の進みたいルートで進もうとすると結構大変です。
でも結局行きつくところは同じ川の下流。広大な海。
そんなに気を張って自分の思い通りにしようとしなくてもいいんじゃない?
まずは流れに身を任せて、進むべき方向に着実に進んで行けばいい。
流れを遮る大きな岩や丸太も押しやったり飛び越えて行ったりせず、水に揉まれていればそのうち押し流してくれる。

人生をこんな風にイメージすると、なぜかインドの旅を思い出します。
あらゆることが思い通りにいかないインドでは事あるごとにイラっとするイベントが待ち受けています。

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インドはうまくいかないことばかり。それだけ印象に残ることばかり

いろんなことがあったなー。

列車のチケットを買おうと窓口に並んでいたら次から次へと横入りされたり、教えられたバス乗り場が全然違う場所だったり、急いでる時に限って牛が道の真ん中に鎮座して大渋滞が発生したり、注文した食べ物と全然違うものが運ばれてきたり、望んでもいないガイドに付きまとわれて後でお金を請求されたり、やっと乗れた満員のバスがいきなりパンクしたり泊まった宿が絶賛工事中で頭上から突然ブロックが落ちてきたりセイフティーウォーターと書いてあったので安心して飲んだら食中毒になったり・・・
そんなこんなをいちいち向き合って悩んでうまくかわそうとしても自分が疲れるだけ。周りのインド人は自分のことで精いっぱい。不条理なことに躍起になっても仕方ないことがほとんどです。うまくいかないことでも、その状況を「ここはインドだからな」と受け入れて前に進むしかありません。インドで散々な目にあってもなんとか死にもせず、むしろ今ではどれもこれも愉快なインドの思い出になっています。

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▲いつか訪れたハリドワールの町。地方の静かな町を想像してたのにかなりのカオスっぷりだった。

とどのつまり、川の流れと同じで、自然と水流にもまれて流されていく方向は同じ。
旅を人生に例えるなら、インド旅はかなり難所だらけ。それら難所を蹴散らしたり破壊したりして進むんじゃなくて、目の前にある状況を考え過ぎず、どうにかしようと頑張らず、流れに身を任せて前に進めばいい。それが結構インド旅を苦しいモノじゃなくて楽しくする秘訣だったりします。
難所が多いだけ後で思い返してみると印象深い出来事がたくさんあるんですよね。

混沌の中で生きる知恵を学ぶ

・・・と、たまにそんな風にインド旅を懐かしむわけなんですが、こんな本を見つけて読んでみたら面白かった!

この本の著者のボブ・ミグラニさんはインド生まれのアメリカ育ち。現在は世界一忙しいと言われるニューヨークの町で製薬会社の営業をやっているそうです。
ボブさん、長いことNYの企業で頑張って働き、仕事のことや家庭のこと、この先の人生のことで悩む時期があったそうです。
そんな時、仕事がらみで故郷のインドを訪れることに。
インド滞在中は前述のようなとにかく思い通りに行かずにイラっとさせられることが山ほど待ち受けていました。
混沌(カオス)の中では自分でなんとか状況を変えようとするのは無理なことが次第に分かって来ます。周りを取り囲むカオスをなんとかしようと考えるのではなく、カオスの中にいる自分の内側、つまり「気の持ち様」を変えて、「こうじゃないといけない」という閉ざされた心を開放する。
インド人はこんなカオスの中で必至に、だけど生き生きと楽しそうに毎日を送っている。その理由が徐々に分かってくるんですね。

その後も頻繁にインドを訪れ、問題にぶち当たると持ち前の責任感の強さが邪魔して流れに逆らおうとするボブさん。
だけどやっぱり「考え過ぎない」「受け入れる」「そして前に進む」ことを実践することで自然と道は開け、ゴールに近づいて行く。
この考え方は人生にも応用できることなんですね。

「考え過ぎない」「受け入れる」「そして前に進む」。インド式カオスのやり過ごし方。

本の中で印象に残ったフレーズを幾つか。

私が心配しようがしまいが、なんら結果は変わらなかった。ふたりは結婚したのである。彼らは結婚し、最後にすべてうまくいった。私は考えすぎたために、おそらく自分の人生で最良の瞬間のひとつとなったであろうものを逃すことになった。

親戚の結婚式に出席したボブさん。式はまったく予定通りに進まず、自分一人なぜか責任を感じて事態を収拾しようとします。
だけど終わってみれば疲れた自分と散々楽しんだ周りのインド人たちの姿があり、新郎新婦も無事に結婚が済んでいる。

インド人にはインド人のイベントの進め方、楽しみ方があって、良く分かってない人間が一人で「これマズイんでないの?」と不安に思ってみたところで状況が大きく変わることはない。それなら「これでええんかの?」と不思議に思いつつも周りに溶け込んで楽しんでしまえばいい。
結局川の水は大海に流れ出て、結果万事OKなわけです。
流れに逆らおうとするだけで消耗するだけですよってことですね。

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▲いつかデリーの町で遭遇した結婚式のパレード。近所迷惑考えず大騒音で練り歩きみんな楽しそうだった。

 

なぜか、まるでそれが宇宙の法則でもあるかのような筋の通らない仕方で、最後には万事つじつまが合う。
だから前へ進もう。混沌を受け入れよう。

世の中には確かにうまくいかないこともあります。地獄を見ることもあります。
現世で回収できなかったことはあの世で、あるいは来世で・・・そんなトンデモな話もありますが、できるだけ自分の生きているうちに思い残すことの無いようにしたいところです。
混沌の中で苦しそうに逆らいながら生きること、それは自然の流れに逆らうことと同じ。だったら混沌の中をスルスルと流されていけばいい。
流れに身を任せてやるべきことをやって楽しく生きていれば、どんな難所も最後にはなんとかくぐりぬけ、必ず帳尻合わせがある。これって仏教的な考え方にも通じますね。

 

考えすぎるのをやめて行動を起こした瞬間、心の中にある自信の種が花を開かせる。
行動することだけが、確かなものなのだ。できることをやってみよう。今すぐ、その場で。

考え過ぎて立ち止まっていては状況は何も変化しません。混沌の中で茫然自失になるのではなく、思い切ってカオスの流れに飛び込んで揉まれてみよう。
ゼロとイチじゃ大違い。自分が動き出せば世界も変わっていく、とそんなところでしょうか。

 

物事はこうあるべきだという考え方から解放されて、あるがままの状況を受け入れたと言っていい。自分のほうに近づいてくるものを見て、それがどんな不完全な姿をしていても、行動を起こそうと努めることには、また、一度走り出してそれをしっかりとつかんだら、自分で活路を開いた人間にはたいていの場合、救いの手が差し伸べられる

インドでバスに乗ろうとしたボブさん。しかしどのバスも鬼のような混雑ぶりでとてもこれ以上人が乗れるようには見えない。こんなバスに乗るのは無理だ!
だけど何度待っても同じようなバスが来るので、意を決して激混み(本の表紙にあるバスみたいな状態ですかね)のバスに飛び乗ったら、中にいた乗客から手を差し伸べられ、なんとか無事に乗車することができました。
そんな経験を行動科学的に文章化するボブさん。いいですね。インドのバスから人生の哲学を学ぶことができます。この本の放題にも選ばれたエピソードにあったフレーズ。

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▲いつかインドで乗ったバスがパンクして乗客は皆降ろされたけど、誰一人ブチ切れて騒ぐ人もなく、事態が変化するまでのんびり木陰で休んでました。

 

思考の方向を自分自身に向けること、心を乱すさまざまな問題にエネルギーを注ぐのではなく、人の役に立とうとする自分の行動に集中した方が良い

結局これに尽きるのでしょう。いろんなことに通じる考え方です。

インドのカオスっぷりと著者の思考の移り変わりがテンポ良く描かれていて良書だと思います。山本晶子さんの翻訳も読みやすい!

今回のケセラセラ

日常から離れて旅することで人生を悟る。そう言ったら大げさかもしれないけど、日々の出来事に悶々として心が停滞してる人は、ちょっといろんなことを脇に置いて旅に出てみるってのはどうでしょうね。
インドなんて強烈過ぎて人生観変わっちゃいます。

僕の周りでも何かを成し遂げようと頑張ってる人がいます。だけど家庭や自分の時間を犠牲にしてまで頑張ってる人を見るにつけ、どこか辛そうだと思っちゃうんですよね。
会社なんて休んで旅にでも出たら?仕事一旦やめて行きたい場所に行ってみれば?と軽い気持ちでアドバイスするのですが、苦笑いしながら「無理だなー」とかわされます。あんたが会社やめたところで世界は動くし時は流れる。もっと自分の望む生き方に流れていけばいいんじゃない?と思っちゃうけど、どうやら一般的な考え方ではないらしい。
不肖ワタクシは浮草みたいな人生なのでいくらでも言えるけど、地に足つけて生きている人はなかなか流れに身を任せて・・・なんて考えには行き着かないのかもね。

何か気分が変わるきっかけになればと思ってこの本を紹介してみました。
あるがまま、ケセラセラに生きましょう〜